SMCI(スーパーマイクロコンピュータ)は今が買い場か? 共同創業者逮捕・連続不祥事の全貌と投資判断

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2026年3月、AIサーバー大手スーパーマイクロコンピュータ(NASDAQ: SMCI)が再び大きな問題に揺れている。共同創業者が約2,500億円相当のNvidiaチップを中国に違法輸出した疑いで逮捕され、株価は1週間で28%以上急落。しかし同時に、アナリスト平均目標株価は現在値から76%上値を示唆している。本記事では、SMCIの不祥事の全貌と、投資判断のポイントを整理する。

SMCIとは:AIインフラの縁の下の力持ち

スーパーマイクロコンピュータは1993年設立のサーバー・ストレージメーカー。NvidiaのGPUを搭載したAIサーバーを設計・製造し、データセンター向けに販売している。同社の最大の強みは直接液冷(DLC: Direct Liquid Cooling)技術で、Blackwellなど最新GPUの1,000W超という消費電力に対応できる冷却ソリューションを提供している。現在DLC市場の約70%のシェアを持つとされ、AIインフラ需要の拡大とともに急成長してきた。

2024年度の売上高は前年比110%増、2025年度は$23〜25B(約3.5兆円)の売上ガイダンスを出し、2026年度には$40B到達を目指していた。AIデータセンターの爆発的拡大とともに、SMCIは「AIインフラの中核企業」として注目を集めていた。

不祥事の連鎖:2020年〜2026年の経緯

① 2020年:SEC会計不正で制裁金

2020年、SMCIはSEC(米証券取引委員会)と会計不正に関する和解を成立させた。不正収益認識・内部統制の迂回などが問題視された。

② 2024年8月:Hindenburg Researchの空売りレポート

著名な空売りファームHindenburg Researchが2024年8月、SMCIに対して厳しいレポートを発表。「SEC和解からわずか3ヶ月後に不正な収益認識を再開した」「イランやロシアへの禁輸違反」「関連当事者との未開示取引(Lambda Labsへの3.2億ドル投資、6億ドルのデータセンター賃貸契約)」などの疑惑を指摘した。このレポートを受け、株価は1日で19%急落。その後数か月で68%下落した。

③ 2024年10月:EY(監査法人)が突如辞任

大手監査法人Ernst & Youngが「経営陣が作成した財務諸表と関わることを望まない」として辞任。これは異例中の異例で、市場に衝撃を与えた。新しい監査法人としてBDO USAが就任した。

④ 2024年末:上場廃止の危機をかろうじて回避

財務報告の大幅遅延により、NasdaqからDe-listing(上場廃止)通告を受けるが、独立調査委員会のレビューで問題なしとの判断を受け、上場維持に成功。2025年は株価が年初来83%上昇し、S&P500構成銘柄で最高パフォーマンスを記録した。

⑤ 2026年3月:共同創業者が逮捕——最新スキャンダル

2026年3月19日、米司法省はSMCIの共同創業者Yih-Shyan “Wally” Liaw(71歳)を含む3名を、輸出規制違反の共謀罪で起訴・逮捕した。容疑の概要は以下の通り:

  • 被告:共同創業者Liaw(米国市民、逮捕)、台湾現地法人ゼネラルマネージャーChang(台湾、逃走中)、仲介業者Sun(台湾、逮捕)
  • 手口:東南アジアの会社を隠れ蓑にしてNvidia製AIサーバーを偽装書類で購入、最終的に中国へ輸送。ダミーサーバーに本物のシリアルナンバーをヘアドライヤーで貼り替えてコンプライアンス監査をごまかすという大胆な手口も用いた
  • 規模:2024年以降で約25億ドル(約3,700億円)の売上に相当
  • 罰則:輸出管理改革法違反の共謀罪で最大20年の禁固刑

Liaw氏は逮捕翌日に取締役を辞任。この発表を受けて株価は33%急落し、時価総額は1日で約45億ドル(約6,600億円)消失した。

現在の株価・バリュエーション(2026年3月時点)

スキャンダル後、SMCIは以下のバリュエーション水準にある:

  • 株価:約$22〜25(スキャンダル前比 ▲33%、全時高値比 ▲81.5%)
  • PER(TTM):約22〜23倍(業界平均44.9倍に対して大幅割安)
  • PSR(株価売上高倍率):約0.8倍(歴史的低水準)
  • アナリスト平均目標株価:$38.89〜$42.38(コンセンサス:Hold)
  • 受注残高:$13B(約2兆円)の積み上がり

強気論:なぜ割安と言えるのか

SMCIに強気な投資家が挙げるポイントは以下の通りだ。

① AIインフラ市場の爆発的成長
グローバルAIサーバー市場は2026年に2,450億ドル超に達すると予測されており、SMCIはその中核に位置する。Nvidiaとの深いサプライチェーン関係も継続している。

② DLC技術のモート
NvidiaのBlackwell・Vera Rubin世代のGPUは消費電力が激増しており、液冷は必須インフラになりつつある。DLC市場70%のシェアは容易に侵食されない強みだ。

③ 格安なバリュエーション
PSR 0.8倍という水準は「永久的な業績悪化」を織り込んだ価格であり、ビジネスが継続する限り過剰な織り込みと言える。NasdaqのIT企業平均と比較しても圧倒的に割安だ。

④ $13Bのバックログ
受注残高が13兆円規模で積み上がっており、今後数四半期の売上可視性は高い。

弱気論:なぜ「投資不適格」と言われるのか

一方、慎重論を唱えるアナリストも少なくない。

① ガバナンスの構造的問題
2020年→2024年→2026年と不正が連続している。SEC制裁後すぐに同様の不正を再開したとされる点は、経営陣の倫理観そのものへの疑問を生む。

② 輸出ライセンス剥奪リスク
今回の輸出規制違反が確定すれば、AIチップの輸出ライセンス自体を失う可能性がある。これはSMCIのビジネスモデルの根幹を脅かす。Dellなどの競合が受注を奪うシナリオも現実味を帯びている。

③ 創業者の離脱
Liaw氏は単なる取締役ではなく、共同創業者かつ営業の要だった。同氏のネットワーク・知見が失われる影響は無視できない。

④ 裁判の長期化
刑事裁判は長期化する傾向があり、その間は不確実性が株価の頭を抑える。

まとめ:投資判断のチェックリスト

SMCIへの投資を検討する場合、以下の点を自問することをお勧めする:

  • 輸出ライセンスが維持されると確信できるか?(最大のリスク)
  • ガバナンス問題を一時的な問題と割り切れるか?
  • AIサーバー市場の成長期待を維持できるか?
  • Dellや他競合への顧客流出が限定的だと判断できるか?
  • 裁判長期化に伴う不確実性に耐えられるか?

バリュエーションだけを見れば「割安」は疑いようがない。しかし、SMCIはその割安さに相応の理由がある。「ガバナンスリスクを許容してでも成長に賭ける」という明確な確信がある投資家にのみ適した銘柄と言えるだろう。中長期でのポジション構築を検討するなら、まずは輸出ライセンスに関する司法・行政の動向を注視することが先決だ。


参考資料

※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄・金融商品への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

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